今日に至るまで窯の火を絶やす事無く、時の需要に従い多種多様の焼物を焼き続けて来ましたがその中でも、桃山期より江戸初期に掛けて茶道具や懐石道具として焼かれた、志野・織部・黄瀬戸・瀬戸黒・美濃伊賀・美濃唐津の6種は美濃陶業史に特筆される焼物で、概ねこの6種こそが茶人(数寄者)に美濃物と称される焼物です。
本来、志野、織部、美濃伊賀、美濃唐津などの名称は桃山期より江戸初期に焼かれた物に付けられた呼び名で、志野、織部、黄瀬戸、瀬戸黒などと言えば、当然に当時の焼物その物を指す言葉です。
然し、四百年前の当時の物は余りにも貴重であり、余りにも希少の為一般的には入手が困難で気軽に使用する事などは更に不可能な事です。
そこで、美濃焼園では多くの美濃物愛好家の為に桃山文化に基づいた当時の美意識、様式、意匠、技法などを出来得る限りに再現した物を収集し展示販売しようと考えました。
また地方ではほんの少数ではありますが、桃山陶の魅力に心を奪われ、原料の枯渇、世相の変化など厳しい環境の中でも、なお一心不乱に立ち向かって居る尊い作家の姿も有りました。
美濃焼園では、これらの同じ考えを持ち、同じ美意識を共有し、理解しあい、尊敬しあえる約20名の作陶家の協力を得て、焼物で桃山を再現し、大河ドラマを演じてみたらどんなに素晴らしい事かと思い、美濃工芸館を設けて実現しました。