詳 細

瀬戸黒は天正年間より焼かれた焼物と言われ、桃山陶としては初期の焼物で、 余り作為を感じさせない簡素な轆轤の素直な切立型が殆どです。

美濃では、この瀬戸黒が当時の侘びの思想を最も表した焼物です。

造りは自然な静寂性を最も重んじた轆轤挽きで、特徴としては切立型で見込み は一文字、高台は非常に低く造られています。

草庵小間の茶室の畳に張り付く様な器形の総渋黒茶碗は、微動だにしない静寂 性、絶対的な安定感、全ての雑念を吸収する総渋黒、正にブラックホールです。

当時の茶人の心をさぞかし捕らえた事かと思います。

織部の「動」とは正反対の「静」の象徴的な焼物であり、侘びを求めた究極の もので、最も精神性の高い奥の深い焼物です。

瀬戸黒の技法は焼成中に釉薬の溶け具合を見計らって、長い金具を使って真っ 赤な茶碗を窯内から引き出し急冷する、引き出し急冷技法です。

鉄分の入った灰釉を引き出し急冷する事に依って、漆黒とする手法という事で す。 この技法は、当時の陶工が焼成中に釉薬の溶け具合を調べる時に、色見と言っ て予めテストピースを幾つか窯内に入れて置き、焼けを見るため順次に引き出 して調子を見る時に、必然的に覚えた現象を作為的に逆利用した手法です。

作品の何処かに引き出した時の傷が有るのが特徴で、この傷は釉薬がまだ熱く 柔らかい時につく為、傷口が適当に収まって、何とも言い様のない景色の一部 に成ります。 それが自然観の有る造りと相まって一層に茶碗を引きたてる効果と成っていま す。

最近では、釉薬に工夫を施して、引き出さず通常の焼物と同様に、窯が冷えて から出しても黒く成る様にして、瀬戸黒と称している作者が居ますが、これは 本当の意味での瀬戸黒では有りません。

(瀬戸黒=引き出し黒) 瀬戸黒も他の美濃桃山陶と同様、当時の高い感性と美意識を網羅していて、瀬 戸黒であり、それが無ければ単に黒釉陶器に他なりません。

瀬戸黒は織部黒や黒織部と同様な技法で黒色を表現していますが、作風に織部 好みの意匠が全く有りませんので、織部とは明確な一線が有ります。

 

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